08年のノーベル化学賞を下村脩・米ボストン大名誉教授が受賞
2008年10月8日 時事ニュース・08年のノーベル化学賞を下村脩・米ボストン大名誉教授が受賞
スウェーデン王立科学アカデミーは8日、08年のノーベル化学賞を下村脩・米ボストン大名誉教授(80)ら3博士に授与すると発表した。受賞理由は「緑色蛍光たんぱく質(GFP)の発見と発光機構の解明」。下村氏らが見つけたGFPとその遺伝子によって、たんぱく質を蛍光標識し、脳の神経細胞の発達過程や、がん細胞が広がる過程などを生きた細胞で観察できるようになった。分子生物学や生命科学の発展に大きく貢献したことが高く評価された。
日本人のノーベル賞受賞は7日の物理学賞3人に続いて16人目。化学賞は福井謙一氏(故人)、白川英樹氏、野依良治氏、田中耕一氏に続き5人目。年間の受賞者数も過去最多の4人となった。
授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、下村氏ら3人に賞金1000万クローナ(約1億4000万円)が3分の1ずつ贈られる。
下村氏は、1962年にオワンクラゲから緑色蛍光たんぱく質(GFP)を初めて発見した。さらに分離・精製にも成功した。このGFPは、紫外線を当てると発光する。その後、92年に別の研究チームがGFPの遺伝子を特定し、複製に成功。さらに別のチームが、異種の細胞内にGFPを導入し、発色させることに成功した。
GFPの発見以前は、たんぱく質を蛍光標識する際、たんぱく質を一度精製した上で蛍光物質を付け、蛍光標識したたんぱく質を生きた細胞内に注入するなど、煩雑な作業が必要だった。GFPは、他のたんぱく質の遺伝子に融合させ、細胞内に入れるだけで、細胞内の好きな場所で蛍光を作り出せる。そのため、目的の遺伝子が生きた細胞内のどの場所で働いているか調べられるようになり、これによって分子生物学や生命科学などの研究が大きく進展するようになった。
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